補足
- 本レビューの下書き用雑記メモは『Filmarks』に記録している。(該当ページ)
本文は上記のメモをきちんとした形に書き直したものになる。とりたてて整えるところがなければほぼそのままのものをこちらにも書いている。 - 作品の商品画像部分および楽天ブックスへのリンクのみアフィリエイトリンクになっています。どちらも楽天ブックスのアフィリエイトです。
- 視聴日:2025/12/25(初視聴)
- 評価:☆0
きっかけ
YouTubeにて視聴。公式で無料配信されていたので何となく観ていた。
感想
YouTubeの「ギャガ公式チャンネル」上にて期間限定で公式配信されたものを視聴。吹替版。
恐らく……初視聴?のはず???だが、妙に既視感はあったので怪しい。視聴中、とにかく、感想が出て来ないタイプの作品だったので、この虚無をどうこねくったものかと思いながら観ていた。何も考えずに観れる作品と言えばそれまでである。
本作は『白雪姫』の童話を語り直したもので、白雪姫がただ助けられる存在ではなくなることを描くついでに他の設定もいろいろ変えている(結局なんだかんだ言っておいてルッキズムだとかはあるが、まあ、本作においてはそこまで気になるものではない)。継母が白雪姫に対して悪意があるなどの根っこの部分は同じ。全体的にコメディーで軽く観れる作品でもあるので別につまんなくはないのだけれども、本当にそれだけではある。
最終的に(というか早い段階で)王子様と結ばれるし王子様は姫のピンチに駆けつけもするけれども、いざというときに戦うのは姫自身であり続けているところは徹底していて、悪役も言っていたように、自分の手で始末をつけるべきだってところの話にはなるのだろうけれども(言い換えれば、魔法に頼らずに自らの力で困難に立ち向かうべきだという話でもあるのだろう)、その戦いも迫害もずっとゆるいものでしかないので、心に刺さりはしない。恐らく社会の荒波で生きる女性(特に女の子)向けの作品なのだろうとは思うけれども、本作を観て何か力づけられる人が居るのかはかなり怪しい。とことん自分勝手で采配も何もなくて愚者でしかない継母にしてもあまりにもそういうものみたいな役割に閉じ込められ過ぎていて何らの象徴性も何もないままゆるい世界観の悪役をしていただけだったりして、何だったんだ……?と思うというか。彼女を定石通りの悪役にするにしても、姫が奮い立つために存在するその対称性でもっと何かキャラクターとしての強さを盛り込めなかったのだろうかとはやや思う。繰り返すように、気楽に何も考えずに観れる作品ではあるので、なんかもうそれでいいのかもしれないけれども。女の子を安全な家の中に閉じ込めて無能力にさせ続ける存在、女の子に対する無関心、若さへの嫉妬、自らの権力に固執すること、相手を支配すること、社会を疲弊させること、自らを映しだす鏡を見つめながらも自らを見つめることなくその悪意を助長し続けて負の再生産をし続けること。自らが鏡のクリスタル(=ガラス)の障害として存在してしまっていること。……白雪姫を語り直すにあたって、いくらでももっと物語的な強さを持たせつつ展開できるところがあったと思うんだよなあ。繰り返しにもなるけれども、姫にしてもあまりにもなあなあに戦ってハッピーエンドに向かうだけだから、その戦いの強さがない。
とにかく、全体的に丸い雰囲気で抑え込んでるから見やすくはあるんだけど、その分説得力がない。
あと、なんで小人たちが最終的に「王子の」という所有格付きの勇敢なる者たちみたいに表現されてたのかとかも気になった。彼らにとって王子様なんかどうでもいいし、その配下であることなんかまるでなかったはずなのに。ここで彼らをそういうふうに括ってしまったことで物語を通して彼らを描いてきたことも意味不明なものになっていた。
白雪姫の幼少期に死んでしまったと思われていた王様が実は継母の使い魔として姿を変えられた上に無理矢理操られていたのだ!でも、うまくその呪いを解いて王様も戻って国も大団円というあまりの丸さと父権と男性社会の大肯定(なんであれば、女性が上に立つことの否定、「女性性」の肯定というふうに読み取れかねない)というものにもなっていたとも思う。二人は幸せなキスをして(ついでに歌って踊って)物語は終わり!みたいなところで落としたのは別にそこに物申す作品ではないので、まあええんやないですかでしかないんだけど、恐らく本作が狙いとしているはずの「童話の中にさえこびり付いているお姫様に対する定石の呪いを外す」「自ら奮い立って運命を切り開く」みたいなところを曖昧なものにさせている部分についてはいちいちとにかく気になったのだった。