【ゲーム】『偽猫物語』感想

PCゲーム『偽猫物語』(開発元:Spoonful Of Wonder)をプレイした。以降、その感想になる。 レビュー内容はSteam上に投稿したものと同じである。

 

 

システム:猫を操作して進めていく3Dゲーム。基本的に操作は単純で二択から選ぶとか、物を避けながら走るとか、目押ししないといけなかったり、時間以内に指定されたボタンをやたらと押させられたりもする。探索などのゲーム要素もかなりあっさりしている。EDも恐らく一つのみ(よく分からず)? だから、シナリオに重きを置いている作品だと言えるのだが、そこに関しては正直私としては徹頭徹尾かなり微妙(どころかかなり不愉快)なものだった。
システム要件も推奨ラインはギリギリクリアしているくらいのスペックではあったはずなのだけれども、グラフィックを「低」にしてもだいぶもったりしていた。最低ラインでちゃんとプレイできるのかは怪しい。
最初はなぜかスタートボタンも機能しなかったのでセーブしているらしい動きのあるところで強制終了をしたのだが、結局ちょっと巻き戻ったところからやり直しする羽目になったりしていた。次にプレイを始めるときにウィンドウモードを変更したのが良かったのか、そこからは普通にスタートボタンがちゃんと機能したりもしていた。謎である。
日本語訳はあるものの、機械翻訳を疑うレベルのものである。この翻訳品質の低さもゲーム内容に悪く働きまくってしまっている。


グラフィック:3D。


あらすじ:物語は、猫の保護施設に訪れた老婆が一匹の猫を連れ帰るところからはじまる。この猫が主人公となる。猫は過去に他の人間に飼われた経験からも老婆に対して警戒心を抱いている。老婆は何とか猫の心を開こうと苦心する。老婆はどうやら体力的に衰弱している素振りもあったり、何やら主人公の猫を引き取る以前に猫に関して何かあったらしいことも次第に明かされていく……。


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感想(ずっと厳しくネタバレ感想しています):Steamのあらすじの説明からはかなりズレている内容だと思う。「猫を主人公としたアドベンチャーゲームで、孤独、諦め、そして「家」の本当の意味を探る物語。新しく迎え入れられた猫が、嫉妬深い野良猫による巧妙な策略で居場所を奪われ、家の平和が脅かされる中で」云々。どこが?である。
最初の保護施設の描写からとにかくずっと物語に対する不愉快さばかりが順調に蓄積されていく作品だった。なんでそんな状態で独り暮らしをしている老婆に保護猫を与えるのかも分からないし、老婆の動機もマジでろくでもない。自分が飼ってたけど逃げた(正しくは娘に逃がされた)猫の代わりにするために同じ見た目の猫を選んで同じ名前を付けて身代わりにして「自分のために」飼おうというのも意味が分からない。自分に何かあったときに猫がどうなるかというのは最後まで度外視されている無責任さ。途中、「私が間違ってたね」と言いながら猫を捨てるのも、結局一切見分けなんかついていないのも、少なくとも猫の視点に立てば心がめちゃくちゃにしかならない。口先では綺麗なこと(にもなってないが)言ってはいるけれども、飼い主に反省なんか絶対ないやろとしか言えない。
猫を家族にしたい、共に生きていきたいとかそういうのじゃなくて、徹頭徹尾、自分を求めてくれる愛らしい存在が欲しいだけではないのか。他の登場人物も含めて、動物を飼うべきではないの一言に尽きるのだけれども、そこも野放しのまま。野良生活も経て最終的に猫は元々彼女が飼っていた(?)猫と共に彼女の元で老人ホームで暮らすのだけれども、お話の展開の何もかもが意味が分からない。仮にそういうろくでなしが登場しながらもこういうEDにするにしても、物語としてはもう少し描写すべきものがあるんじゃないかというくらい、とにかくご都合主義的に身勝手に話が展開するし、その身勝手さが然るべくしてストーリー描写の中に落ち着いていない。


プレイヤーは主人公の猫を操作することになるのだけれども、そこで委ねられる自由裁量はゼロであり、ゲーム制作者が望む動きしか私たちができることはない。それに本作では画面上に現れる文字を通して主人公の猫の心情が読み取れるようになっているのだけれども、その思考もまるでちぐはぐでプレイヤーを置き去りにして勝手にストーリーと絡まって進んでいく。主人公猫の喜怒哀楽のどれもまるで理解できないまま、一本道状態のプレイを強いられ続ける。私がやりたいとも思わないことだろうが何だろうが強制的にさせられる。そういう意味での不愉快感も徹頭徹尾貫かれてしまっている。
主人公猫が描写内のどこで飼い主に惹かれるのかも(家から追い出されてしまってからの執着の具合もまるで理解できないし、飼い主そのものへの愛というより、安全地帯に対する執着でしかないとしか受け取れないところとか)、どう生きづらいのかも、どうしたいのかも分からないし、悩み生きる猫が結局飼い主に固執することにするのも私から見ると消極的な執着心でしかないし、互いに不健康に執着し合って依存しているだけなのに「ハッピーエンドです」面をされる意味も分からない。
「居場所があること」が本作のテーマでもあろうけれども、そこがへにゃへにゃと不時着したまま終わる。妥協というか、なんかもうそうするしかない後ろ向きの生。で、そういうものをストーリーとして描くなら描くでいいんだけれども、そういう内容を描くことに対してどこまで自覚的に描いているのかという不信感があまりにも強い。制作者の雑な都合のいいプロットにこちらはひたすら付き合わされてといるいう感じがあまりにも強い。


途中で猫がもうどう生きたらいいのか分からなくなって、自分には家で飼われる猫の能も、野良猫として生きていけるだけの能もない。そんな自分がどうしたらこの世界で生きていけるのか……と絶望するのだけれども、その問い自体は我が身にも迫るものがあってすごく良かったのだけれども、この辺にしてもとかく描写が浅いまま進展するので物語として刺さることがないままだったのも残念だった。


人間の身勝手さとか、「自分の物」にして適当に甘やかしておけば心を開いて「可愛いペット」になってくれると思うようなそういう醜さが作中ではまろび出てはいるけれども、そこを批判的に描き切れてはいないままなあなあで流されていたりとかで、結局どういうつもりでお話を展開させているのかが最後まで分からなかった。
飼い主が倒れたときに「見るな、あっち行け」と言われたから、その時点の展開まででも別に親密度が高まっているわけでもなし、素直にそれに従ったら後の展開でそれをナレーションに詰られたりとか、とにかく展開に付いて行けないというか。プレーヤーというか少なくとも「私」を無視しているタイプの作品だったし、ロールをするための隙もないからどうにもならないというか、とにかくずっと勝手に話が進んで行く。プレイヤーというより読み手のことも置いてけぼりにする感じ。
猫の夢の中の理想の野生世界の都合のいい「自分が最強でいられる世界」みたいなものの描写も次第に不安定になりながらもとにかく繰り返し繰り返し描写されるけれども、それが一応お話と重なるように描かれてはいるけれどもその気高い自由というよりは身勝手な自由さや暴力的な感じがうまく落としきれてなかったり。猫の立ち位置をどうするかみたいなのも曖昧なところが強かったと思う。


郊外のいかにも素敵な一軒家に住まうことに安寧があるわけではなくて、老いはあるし、家族との関係はあるし、病気もあるし、孤独も先行きの不安定さもあるし、自分が無力な感じ、存在が希薄な感じもある。だからただその見た目に現れているだけの「家」に執着すればいいわけではないよねというような語りはそれはそうだし、それを老人と猫という同じ家の中で暮らす両者の立場から描こうとするのは面白いのだけれども、ここから見たときの飼い主側の動向なんかも物語の中でどっしり構えて展開することはなくて勝手に流れていく感じがやはり強かった。
で、それがあくまで猫の視点だからそう見えるというふうにも処理されていなかったのでとにかく中途半端なものだった。ここがもっとしっかりしてたら重厚で面白い作品になっていたはずだし、猫の視点からシミュレーションすることに意味も見い出せたはずである。


ゲーム要素も猫らしい素振りということでペンキ缶を倒したりとかいろいろあって、それも私がやりたくてやるならまだしも、強制的にさせられる場面もあったりする。指定されたボタンを時間以内に押すような場面なんかはだいぶ無理をさせられる場面もやけにあってそこもストレスだった。


あと、猫の視点で思考が進むにしても、それって作者の意見ですよねみたいなものもあったり(人気のない立派な公園を散策してるときに、人気はないけどこういうのが造られて納税者としては満足ですよねみたいな皮肉を飛ばしてるのとか)、猫の考えのはずの箇所に、それって作者の願望ですよねみたいなものを猫に押し付けている感じがあまりにも強いものであったりとか。
恐らくそこからもっと猫への愛を語ろうとする作品だろうに、結局、愛玩動物としての眼差しから脱し切れていない内容だったと思う……。
私は別に私である必要なんかないんじゃないか、私は電池みたいなものでしかないのではないかという深刻な話をしていてその着眼点自体はすごく面白いんだけど、一切活かせていないという。そんで猫に限らず我が身に迫るものでもあるはずの問いで、恐らくそういうところまで話を延長させて描くつもりがあっただろうに、それが全くできていない。